見附正康

 みつけ まさやす

​くたにあかえ

九谷赤絵

江戸時代に生まれた石川の伝統工芸、九谷赤絵。 その技法を正しく受け継ぎながら、 見附正康さんは自分らしさを表現し続ける。 人々を魅了するオリジナリティーの秘密に迫った。

この道に進むきっかけは何ですか?

40周年記念展「無形にふれる」の会場にて

見附さん:実は、物心ついたころから習字をしていて、筆で絵を描くのも大好きでした。そう言う私を見ていた父から、九谷焼の学校の存在を教えてもらったことがきっかけですね。

 

-どのような修業をされたのですか?

見附さん:高校卒業後、まずは石川県立九谷焼技術研究所へ進学して、そこでひととおりの技法を学びました。中でも、「赤絵細描」を再興させた福島武山先生の授業に、ハマってしまって。すごく細かく筆で絵を描く授業で、私の性格にぴったりでした。それで、卒業後も福島先生のもとで修行したいとお願いに行ったのです。

 

-住み込みのお弟子さんのようなスタイルですか?
見附さん:当時、福島先生のところには、お仕事をお手伝いされている女性の内弟子がいらして。なので、私は、外弟子というか、習いに来るなら良いよと言って頂いて。週に2回自宅から通って、昔ながらの赤絵を写したり、筆のタッチなどを学んでいました。

-何年くらい福島先生のもとで修行を?
見附さん:10年間です。最初に先生のところに行った時に、まあ10年くらいは勉強しましょうと言われたので。今思いますと、それくらいは修行したほうが良いと思います。ただ、その間、もちろんお給料はないので、アルバイトしながら通ってました。本当に、両親の理解があったおかげです。近所の人たちからは、「息子さん、アルバイトをして、ずっと先生のところへ通ってるけど、どうなんだろう?」と思っていた人もいたのかなと(笑)。

-修行期間が終わる時というのは、何か試験のようなものが?
見附さん:卒業制作のようなものはなくて、先生の中で、「10年の間に、九谷赤絵でちゃんと食べて行けるように育って欲しい」、と言うお考えがあったのだと思います。

-伝統的技法からいまの作品に到るまでの経緯についてお話しください。

見附さん:家は焼き物と関係のない普通のサラリーマン家庭でしたので、いずれ自分の家のある片山津に工房を持って制作するのだろうという思いがありました。何か自分の物を作らないと皆さまに知っていただけませんし、認めてもらえません。自分のカラーを出したくて、自分がきれいだなとか好きだなと思うものを赤絵で表現できたらいいなと思って、今の作品にたどり着いた気がします。

見附作品の特徴について

見附さんの赤絵作品は際立った繊細さが人気の秘密

-見附さんの赤絵細描の秘密はなんですか?

見附さん:私が求める線を描くためには、普通の面相筆ではちょっと太いので、自分で加工して細くなるようにしています。まわりを一周分ぐるっと、毛を取っちゃうのです。かなり描きやすいように加工してあります。あと、小さい頃から筆に慣れていたのが九谷の学校に入っても役に立ちました。今ではタコができて爪も変形しちゃいましたが、ちょうどぴったり筆が収まるんです。この指のおかげもありますね。

 

-作品は何からインスピレーションを受けているのですか?

見附さん:建築だったり、洋服など色々な柄やジュエリーや装飾品だったり。きっと自分が興味を持って、きれいだな、美しいなと感じたものが作品になっているのだと思います。

-修行時代にヨーロッパを旅行されたとお聞きしましたが、いかがでしたか?
見附さん:すごく面白かったです。ヨーロッパでは、椅子や柱の装飾とか、足元のタイルとか、そういうものばかり写真に撮っていました。

-現在は石川県の片山津で制作されているとのことですが、土地柄、冬の制作が大変だそうですね?

見附さん:一昨年、北陸では凄い大雪で、朝、外に出られませんでした。雪かきのあとは手が震えて仕事ができないのです。それが一番焦りました(笑)。雪かきだけではなく、やはり腕に負担がかかる作業はどうしても心配になりますね。

「ポーラ伝統文化振興財団40周年記念展 無形にふれる」について

-今回の展示作品は東京初公開ということですが、従来の作品と何か違う点はありますか?

見附さん:重要無形文化財保持者(紋紗)の土屋順紀先生と截金ガラスの山本茜さんと、2017年富山県のギャラリーNOWさんで三人展をさせていただきました。その時に作ったコラボ作品を今回展示しております。最初、土屋先生からお話があり、何か三人で作りましょうと言ってくだいました。土屋先生が蓋物がお好きということで、茜さんと相談して香合を製作しました。下を僕が作って、それに合わせて茜さんが蓋を作って下さいました。その仕事で僕もとても勉強になりました。お二人とも僕が尊敬している方たちで、「極める」ということを学んだ気がします。

企画展会期中に行われたワークショップは大盛況

伝統文化ポーラ賞の受賞について

-見附さんは、第39回伝統文化ポーラ賞奨励賞を受賞されました。九谷赤絵の伝統的な技法を用いながらも、独特な空間を演出して生み出す作風が、「未来につながる新たな赤絵作品」として評価されたと聴いてますが、この賞は見附さんにとってどのような存在ですか?

見附さん:すごく光栄で嬉しいです。何よりいつも応援して下さる先生方やお客様、お世話になっているギャラリーの方とか、皆さんにやっとお礼ができたような気がしました。

インタビューを終えて

 POLA Museum Annexで行われた「ポーラ伝統文化振興財団40周年記念展 無形にふれる」(1月18日(土)〜2月16日(日))で開催されたトークイベントでは、見附さんご自身によるデモンストレーションが実施され、来場者の質問に親身に答えながら、筆入れのコツを丁寧に披露されていました。見附さん作品のファンや遠方からのお客様、リピーターの方々が多く参加され、見附さんの実際の作業にクギづけとなって、どんどん描かれていく繊細な赤絵に感嘆の声を上げていました。

 さらに今年の夏は、パナソニック汐留美術館にて開催される1970年以降に生まれた作家を特集した新企画「特別企画 和巧絶佳展令和時代の超工芸」(7月18日(土)〜9月22日(火・祝))にも出展される見附さん。美しい大皿の作品は企画のメインビジュアルになる予定で、若手作家としていま最も注目されています。

 見附さんは伝統を大切にしながら、自分らしい作品の制作を心がけています。確かな技術に裏打ちされた、現代的で繊細な文様で、見附さんの作品は見る者の心を掴んで離しません。