公益財団法人 ポーラ伝統文化振興財団
40周年を迎えて

公益財団法人 ポーラ伝統文化振興財団
理事長 小西 尚子
ポーラ伝統文化振興財団は、日本の伝統文化を通じて「豊かな社会と文化の向上」に寄与することを目的に、ポーラ・オルビスグループの支援により1979年に設立され、今年で40周年となります。これもひとえに、日頃より弊財団の活動にご理解、ご支援をいただいております皆様方のお力添えの賜物と、衷心より厚く御礼申し上げます。
弊財団では、伝統工芸、伝統芸能、民俗芸能という日本の貴重な無形の伝統文化の保存・継承・振興を目的とし、顕彰事業、助成事業、保存記録作成事業を柱に、40年に亘り活動を続けてまいりました。
この設立40年という節目を契機として、豊かな社会における文化芸術の果たす役割を改めて見つめ直し、今後も日本の伝統文化のさらなる振興に寄与してまいる所存です。
今回、弊財団に日頃お力添えをいただいている皆様に、祝辞を賜りました。
改めて、御礼とともに今後のご支援をお願い申し上げます。

伝統文化の担い手に寄り添い、
文化と人を結ぶ
文化庁 長官 宮田 亮平
ポーラ伝統文化振興財団の設立40周年、誠におめでとうございます。貴財団は、日本の歴史・風土に育まれた特色ある伝統文化に早くから注目され、無形文化財に関する唯一無二の御活動を継続されてきました。
生活環境・習慣の変化、少子高齢化や人口減少等により、伝統文化の継承は近年ますます難しくなっています。
かけがえのない無形文化財を次世代へとつなぐためには、「伝統文化の継承は重要である」という総論に留まらず、それぞれの祭りや芸能、工芸技術ごとに異なる事情と問題に向き合うことが大切です。それには、伝統文化の担い手一人一人、そして伝統文化に出会う一人一人の力が欠かせません。
顕彰・助成・記録作成等の事業を通じて、担い手に寄り添い、伝統文化と人々を結ぶ御活動を続けてこられた貴財団が、今後ますます御活躍の場を広げられ、無形文化財の保存・伝承・普及に寄与されることを期待いたします。

出会いと発酵を繰り返し、未来の
伝統文化を生み出す
初代・駐ブルキナファソ特命全権大使
ブルキナファソ国家勲章オフィシエ
パリ日本文化会館 元館長 杉浦 勉
ポーラ伝統文化振興財団の設立40周年おめでとうございます。
この40年間に貴財団が取り組んでこられたことは、内面の美や心の豊かさなしには本当の美しさは生まれない、という思いに根ざしているとお聞きしております。私は、真の美しさは伝統への崇敬の念と伝統に根ざした革新への努力から生まれるのではないかと思っております。
また、私は常々新しい文化の創造は「根源現成」の繰り返しであるとも思っております。「根源現成」とは底流に流れる伝統文化が、他の国々や人々との出会いによって、あるいは新しい技術や感受性と出合うことによって、新たな文化が次々に創造されていくという考え方です。例えば、からくり人形が人型ロボットに、鳥獣戯画や大津絵がマンガやゆるキャラに変容するように。
こうした点を鑑みて、私は現在館長を務めておりますパリ日本文化会館の事業企画方針の一つとして「伝統文化の今日的発現」をテーマに掲げています。19世紀末に日本の浮世絵がフランスを中心とする欧州の画家たちに多くのインスピレーションを与え、新たな「ジャポニスム」という美術潮流を生み出しましたが、そのように日本の伝統文化が国を超えて新たな文化潮流を生み出すこともあります。伝統文化は出会いと発酵を繰り返しながら、未来に向かって新たな文化を生み出し続けていくものと思います。
その意味で、ポーラ伝統文化振興財団の取り組みは、単に伝統文化を振興するだけではなく、新たな文化創造にもつながってきた、またこれからもつながっていくと確信しております。今後のますますのご発展を心から期待しております

無形の文化の優れびとに、しなやかに
対座する財団へ期待
独立行政法人国立文化財機構
東京文化財研究所名誉研究員 三隅 治雄
伝統文化ポーラ賞第一回の大賞は、沖縄伝来の芭蕉布づくりにする平良敏子氏と女性のグループでした。糸芭蕉の栽培から織り上げるまでの丹念・忍耐・愛情の重積が生んだ清雅な輝き。
無形文化は人の「」の所産です。徹底した基礎技術の体得の上に、の手抜きも許さぬの修練が工芸・芸能の光彩を創出する。内から滲み出る美。目立たなくとも底光りするの冴え。ポーラ賞はそうした技びとを賞して来ました。
国の文化財行政と連携し、文化財未指定分野の民謡・座敷芸等や舞台美術・照明・道具方等のれびと、研究者、支援者等々を表彰し、また、初期のころ、多彩な創作活動や独歩の芸風の名人はいかがか?の論議の中、保持者認定を受けずに惜しまれた方々を大賞に選ぶなど、国の施策を補完する役割をも果たしました。伝統文化のより良き伝承・創造に、きめ細かく、しなやかに対座する財団への期待は多大です。

伝統文化ポーラ賞は、日本の文化を
守り続けるための道標
日本工芸会常任理事 中川 衛
ポーラ伝統文化振興財団の設立40周年、おめでとうございます。
私たちの暮らしは、スピードを上げて変化しています。たとえば、お茶やコーヒーを飲むのにも、熱い缶入りコーヒーや冷えたペットボトルの飲料水も、手軽に購入できます。こうして急須やポット、湯飲みなどの道具が簡略化され、気が付くと時短の習慣が入り込んでいます。しかし、それは逆に、暮らしの楽しみ、癒やしなどの習慣をなくしてしまっているのではないでしょうか。
工芸制作に携わっている私も、その変化を感じながら、自身が創る作品に不安がつきまとうときもあります。しかし、そんなときに伝統文化ポーラ賞を受賞することは、自身の道を走り続ければいいと励まされ、道標を示して認めてもらったような気になったものです。マラソンで言えば、折り返し地点で大きな声援をもらったようなものなのです。
これからも、こうした伝統文化を守るため、そして日本の文化が廃れないように地道な活動を続けてほしいと願っています。

伝統文化の魅力を、世界へ
発信する拠点として
二十六世観世宗家 観世 清和
この度はポーラ伝統文化振興財団設立40周年、誠におめでとうございます。
長きに亘り我が国の伝統文化に広く目を配られ、担い手の顕彰や伝承活動の支援などに献身的に取り組まれてこられました事、心からの敬意を表する次第でございます。
あらゆる事が目まぐるしく変化し、情報が交錯する時代の中で、その意義や価値を分かり易く伝えることは容易ではありません。能楽に携わる私共も日々その難しさを感じて居りますが、その中でも貴財団とその活動は、大きな存在でございます。
私自身、第33回伝統文化ポーラ賞大賞受賞の栄誉に浴させて戴き、賞の重さを感じ、新たな研鑽の契機と成りました。
今、日本を訪れる外国人は急増し、日本の伝統文化への注目も更に高まって居ります。今後共、貴財団が我が国の伝統文化の魅力を世界に発信する拠点として、益々ご発展をされます事を、心よりお祈り申し上げます。
改めましてポーラ伝統文化振興財団設立40周年を心よりお祝い申し上げ、ご挨拶とさせていただきます。
(敬称略)